【簡単解説】エンジンの性能や仕組みを理解するためのオットーサイクル

オットーサイクル エンジン

前々回、理想的なサイクルとしてカルノーサイクルを紹介しました。今回は、そこから発展して実用サイクルとしてオットーサイクルを紹介します。実用サイクルの理解を深めることで、エンジンの仕組みや性能を理解することにもつながります。

オットーサイクルとは

オットーサイクルは、定容サイクルもしくは等容サイクルとも呼ばれます。文字通り、容積(体積)の変化が等しいプロセスとなっているサイクルです。また、この機関を最初に作った人の名前がニコラウス・オットーであったため、オットーサイクルと名付けられました。

オットーサイクルの原理は、主にガソリンエンジンに利用されているサイクルです。なので、このサイクルを理解することで、エンジン設計者として広く実用的な知識が身に付きます。

オットーサイクルの解説

オットーサイクル

上の図は、オットーサイクルの4つのプロセスを示しています。

1⇒2のプロセスは断熱圧縮です。ピストンが下から上へ動くことで、燃焼室内にある混合気を高温高圧の状態に圧縮します。その際、混合気の体積は減り、圧力が上がり、温度が上がることをPV線図とTS線図で示しています。

2⇒3のプロセスは等容変化(等容吸熱)です。圧縮された高温高圧の混合気に点火プラグから火花が点火し、燃焼・爆発が起こります。この吸熱プロセスが一瞬で起こったとして、PV線図では体積一定のままで圧力のみが上昇しています。TS線図では、温度もエントロピー(吸熱)も上昇しています。この3の点がPmax(爆発最高圧力)やTmax(燃焼最高温度)となり、エンジンの燃焼室設計や強度設計に重要な指標となります。

3⇒4のプロセスは断熱膨張です。爆発によってピストンが上から下へ動き、連接棒やクランクシャフトへ動力を伝達します。その際、燃焼室の体積は増え、圧力も温度も下がるということをPV線図とTS線図で示しています。

4⇒1のプロセスは等容放熱です。燃焼ガスが排気弁を通って排出され、新気(新しい混合気)が吸気弁から流入します。シリンダー内の排気ガスが混合気に入れ替わる動作が一瞬で行われたとして、PV線図は体積一定のままで、圧力のみが減少しています。TS線図では、温度もエントロピー(放熱)も減少しています。

このようなプロセスを辿って、エンジンの圧縮行程⇒燃焼⇒膨張行程⇒排気行程・吸気行程が行われていることをサイクルとして表しています。(ここでのサイクルは、ピストンが上下1往復しかしていないので、2ストの行程をイメージしてください。4ストのサイクルやさらに実際に近いサイクルのロスも考慮する方法は今後解説します。)

オットーサイクルを基にしたエンジンの熱効率

PV線図の面積が正味の仕事ですので、熱効率は”正味の仕事”÷”投入熱量”で求めることができます。こここでは、エンジンのスペックに合わせて計算しやすい様に作られた理論式を使って、試算してみようと思います。

オットーサイクルエンジン適用した場合効率は、理論的に以下の式で表されます。

熱効率η = 1 – { 1 / ε^(κ-1) }

ε:圧縮比 κ:比熱比 で、つまり、圧縮比と比熱比によって決まり、これらが大きくなるほど、熱効率が上昇するということになります。

例えば、圧縮比が9.0、比熱比が混合気の約1.4のガソリンエンジンに当てはめてみると以下の計算になります。

熱効率η = 1- { 1 / 9.0^(1.4-1) } = 0.5848 ≒ 58.5%

このエンジンの理論的な熱効率は58.5%ということになります。カルノーサイクルの理想効率よりは下がりましたね。

まとめ

今回はガソリンエンジンで使われているオットーサイクルについて解説しました。熱効率は圧縮比と比熱比によって理論的には決まりますが、実際にはまだまだ奥が深いですので、今後さらに解説します。エンジンで使うサイクルはその他にもありますので、次回はディーゼルサイクルについて紹介します。

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