【簡単解説】エンジンの性能や仕組みを理解するためのサバテサイクル

サバテサイクル エンジン

過去に、実用サイクルとして、オットーサイクルとディーゼルサイクルを解説しました。今回は、それらを複合させたサバテサイクルについて、簡単に解説します。

サバテサイクルとは

サバテサイクルは、複合サイクルとも呼ばれ、オットーサイクルの等容変化とディーゼルサイクルの等圧変化の両方を含んだサイクルになっています。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどすべてのエンジンは、厳密にいえば、いずれもサバテサイクルに属しています。なので、このサイクルを理解することで、エンジン設計者がエンジン性能を評価する際に広く活用できるようになります。

サバテサイクルの解説

サバテサイクル

上の図は、サバテサイクルのプロセスを示しています。2⇒3’⇒3のプロセスがオットーサイクルとディーゼルサイクルを複合させたプロセスになっており、その他のプロセスはオットーサイクルやディーゼルサイクルと同じです。

1⇒2のプロセスは断熱圧縮です。ピストンが燃焼室内にある気体を高温高圧の状態に圧縮することで、体積が減り、圧力が上がることを示しています。

2⇒3’のプロセスは等容変化です。燃焼・爆発が一瞬で起こり、体積一定のままで圧力のみが上昇します。燃焼・爆発が継続しながら、3’⇒3の等圧変化に移行します。ピストンが下降しながらシリンダ内の圧力が一定に保たれつつ燃焼・爆発が完了します。PV線図では最初の燃焼・爆発で体積一定のまま圧力が上昇し(2⇒3′)、ピストンが下へ動き体積が上昇しつつ、圧力は一定(3’⇒3)の軌跡となります。Pmaxは3’~3の地点になります。

3⇒4のプロセスは断熱膨張です。爆発によってピストンがさらに下へ動くことで、燃焼室の体積は増え、圧力が下がることを示しています。

4⇒1のプロセスは等容放熱です。燃焼ガスが排気弁を通って排出され、新気が吸気弁から流入します。シリンダー内の排気ガスが新気に入れ替わる動作が一瞬で行われたとして、PV線図は体積一定のままで、圧力のみが減少しています。

オットーサイクルやディーゼルサイクルに比べて、燃焼・爆発のプロセスが2⇒3’⇒3と実現象に近い形に修正されていることが特徴です。これにより、実際のエンジン性能の評価に使いやすくなっています。

サバテサイクルの熱効率

サバテサイクルの熱効率は、理論的に以下の式で表されます。

熱効率η = 1 – { 1 / ε^(κ-1) } X [ ρ(σ^κ -1) / {ρ – 1 + κρ(σ-1) }]

ε:圧縮比 κ:比熱比 ρ:爆発度 σ:等圧度で、つまり、圧縮比や爆発度が大きいほど、また、等圧度が1に近いほど、熱効率は高くなるということになります。

例えば、圧縮比が14.0、比熱比が空気の1.4、爆発度が2.0、等圧度が1.5のディーゼルエンジンに当てはめてみると以下の計算になります。

熱効率η = 1 – { 1 / 14.0^(1.4-1) } X [ 2(1.5^1.4 -1) / {2 – 1 + 1.4 X 2.0(1.5-1) }]

= 0.633 ≒ 63.3%

このエンジンの理論的な熱効率は63.3%になります。

まとめ

今回は、複合サイクルであるサバテサイクルについて、解説しました。このサバテサイクルを基に、様々なロス(損失)を考慮することで、実際のエンジン効率を評価できるようになります。次回はロスについて、簡単解説します。

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