【簡単解説】水素エンジンとガソリンエンジン・天然ガスエンジンの設計面での違い

水素エンジン エンジン

水素エンジンって聞いたことはありますでしょうか?二酸化炭素(CO2)を出さなくて環境に良いので、トヨタなど色々なメーカーが開発して、レースなどで実際に走らせたりもしています。今回は、そんな水素エンジンの特徴を、ガソリンエンジンや天然ガスエンジンとの違いを比較しながら、簡単に解説します。

水素の特徴

水素をエンジンの燃料として使う時の特徴を以下の通りまとめて紹介します。

燃えたときにCO2を出さない

これが水素を燃料として使う最大のメリットです。ガソリンや天然ガスを燃やすとCO2が出てしまいますので、地球温暖化防止のためにCO2を出さないクリーンな燃料として水素が選ばれています。

ガソリン車に比べて、天然ガスエンジンはCO2を2~3割低減できますが、水素エンジンになるとほぼ10割削減できます。簡単ですが、化学反応式は以下の通りで、水素を燃焼させると水しか出ないです。

2H2 + O2 → 2H2O

単位体積当たりの発熱量が小さい

これが最大のデメリットです。水素の低位発熱量は10.8MJ/Nm3で、天然ガス(メタン)の35.8MJ/Nm3に比べると、約1/3倍小さいです。エンジンのインジェクターとしては、3倍の量を噴射することが必要になります。

また、燃料タンクも約3倍大きくしないといけない、というデメリットもあります。

着火しやすい・燃焼速度が速い

水素はメタンに比べると、最小着火エネルギーが約1/10倍小さいです。また、層流燃焼速度が7~8倍速くなります。この点は、エンジン設計者としての腕の見せ所になりますが、エンジンとしてはノッキングやバックファイアなどの異常燃焼が発生しやすくなりますその対策として、希薄燃焼させたり、直噴弁を使ったりという技術を採用されることが多いです。

漏れやすい

水素は分子量が最も小さい原子で、密度も軽いです。そのため、配管の接続部などから漏れやすいという特徴もあります。この点も、エンジン設計で対処することになります。エンジンとしては、換気をよくするとか、二重の配管を用いるなどの対策をしています。

水素脆化が発生する

水素固有の特性ですが、水素原子が鉄などの金属に吸蔵されて、金属材料がもろくなる「水素脆化」という現象が発生します。エンジンとしては、水素脆化しにくいSUS(ステンレス)を材料として用いることで、対策を施しています。

水素エンジンの設計面での違い

水素の特徴を基に、水素エンジンではガソリンエンジンや天然ガスエンジンとは異なる設計が反映されています。主な設計面での違いは以下の通りです。

  • 燃料系統:水素の漏洩や水素脆化の対策が施されている(配管材料、二重管構造、換気など)
  • 燃焼関連:異常燃焼対策が施されている(空燃比を上げて超希薄燃焼にする、直噴弁を採用する、Pmeを下げる、など)(空燃比や超希薄燃焼、直噴弁などの用語がわからない場合は過去の記事をご参照ください)
  • 排ガス系統:排ガス中の水分割合が増えるので、結露対策が施されている
  • 安全設計(クランクケースなど):水素は可燃ガスのため、ブローバイガスや排ガスが引火しないように、天然ガスよりもさらに対策が施されている

まとめ

今回は夢の水素エンジンについて紹介しました。水素エンジンは環境に優しい未来の技術として期待されていますので、エンジン設計者がきちんと設計することでいくつかの課題を克服して、実際に普及される日が来ることでしょう。

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