【簡単解説】等船速線とエンジン出力・回転数の関係

等船速線 エンジン

船舶に搭載するエンジン仕様(出力・回転数)を選定するときに、「等船速線」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。4回前の記事で、エンジン出力の3乗カーブについて、理論的に詳しく説明しましたが、それは等船速線という概念につながります。今回の記事では、等船速線やエンジン出力・回転数との関係についてわかりやすく解説します。

等船速線とは

等船速線とは、船速(船の速度)が一定になるエンジン出力・回転数を示したグラフ上の線です。プロペラは直径を大きくして、ゆっくり回転させる方がプロペラ効率が良くなって、必要となるエンジン出力を抑えられます。そのため、仕様上では、プロペラ直径を変更することで、同じ船速を出すために必要となるエンジン出力と回転数を複数選ぶことができます。

具体的には、必要となるエンジン出力はエンジン回転数の約1/3乗に比例します。厳密には、プロペラ直径の大径化には船体の形状の制約がありますが、エンジンやプロペラの選定上、便利なので計算方法を覚えておくと便利です。

エンジン出力と回転数の関係

参考として、以前と同じくMAN社の7G60ME-C10.5の出力と回転数を以下のグラフに青色でプロットしています。仮に、13630kW x 96rpmという出力x回転数で船速が15knotだったとします。そのポイントからグレーの線のように、1/3乗のラインで等船速の15knotとなる出力・回転数の線を引くことができます。回転数が上がる場合はプロペラ直径を小さくすることで、回転数が下がる場合はプロペラ直径を大きくすることで実現できます。例えば、70rpmまで下げると、12540kW x 70rpmという出力x回転数を選定することができます。出力が13630kWから12540kWに約8%下がっています。この8%がほぼそのまま燃料消費量の節約につながるということです。

等船速線

まとめ

船舶の仕様やエンジン仕様(出力x回転数)を選定する時に、等船速線の考えを利用することで、計画の船速を維持しながら、最も燃料消費量が少なく、かつ、船舶形状などの制約条件を満足する仕様を検討することができます。近年の舶用エンジンがロングストローク化して低回転化しているのは、プロペラの大径化と組み合わせて、船舶の運航コスト(燃料消費量)を減らすという狙いがあったからなのです。また、4回前の記事でも紹介しましたが、船速を抑えることで、出力を大幅に抑えることもできますので、その効果とも相性が良いのです。

等船速線の理解が船舶の仕様や運航の効率を高め、経済性や環境負荷の低減につながれば幸いです。ご質問があれば、ぜひコメント欄までお願いします!

コメント

タイトルとURLをコピーしました