燃焼室という部品は無いのですが、エンジンの燃焼を行う最も重要な場所になりますので、今回わかりやすく解説します。その他にも、エンジンの構造や性能を理解するために重要な用語について、エンジンスペック(仕様)でも一般的によく使われる言葉なので、簡単に解説します。ぜひ覚えて頂いて色々な場面で役に立ててみて下さい!
燃焼室とは
以下の概略図のオレンジ色の空間が「燃焼室」になります。ピストンが上死点に達したときに、ピストンとバルブ、シリンダーヘッド、シリンダーで囲まれる空間のことを「燃焼室」と呼んでいます。シリンダーの内部で、ピストンが頂上部に到達するもっとも高い位置を「上死点」、もっとも低い位置を「下死点」と呼んでいます。また、ピストンが下死点に位置しているときのシリンダーの容積を「シリンダー容積」と言います。
燃焼室は最も高温になる部材なので、設計技術者としてエンジンの信頼性に関わる重要部品として取り扱う必要があります。燃焼室の形状はエンジンの信頼性にも効率にも影響を与えますので、さまざまな形状があり非常に奥が深いです。
ボア・ストロークとは
ピストンの直径を「ボア」(Bore)と呼びます。また、ピストンが上下に動く距離を「ストローク」や「ピストンストローク」と呼びます。2ストロークエンジンや4ストロークエンジンの語源ですね。
例えば、トヨタの86という車に搭載されているエンジンは、ボア86mm、ストローク86mmです。わかりやすいですね。
排気量とは
シリンダー容積から燃焼室の容積を引いた数値が「排気量」です。これは、ピストンがストロークする容積と同じになります。ボアが86mm、ストロークが86mmで4気筒というエンジンスペックを例に計算すると、ピストン面積(π(パイ=3.14) / 4 x 86mm^2)にストローク(86mm)を掛けると、約500,000mm3(=500cc) (=0.5L)となります。これが4シリンダーありますので、500 x 4 = 2000cc (=2.0L)で排気量になります。よく2リッターエンジンとか、2000ccエンジンとか言うと思いますが、このようなピストンやストロークの関係になっているのです。このように、排気量は「シリンダー容積 x 気筒数」もしくは「ピストン面積 x ストローク x 気筒数」の簡単な計算式で求めることができます。
排気量は大きいほどエンジンの出力が高くなり、パワフルな走行ができるようになります。一方でエコカーなどでは小さな排気量でも効率的に燃焼するエンジンでそれなりに走行することで燃費が良い車になっています。
一般的には、ボア・ストロークが大きくて、排気量が大きいエンジンほど、パワーがあると考えて頂いて大丈夫です。さらに過給機(ターボ)が付いていると、排気量の数字以上のパワーが出ます。
圧縮比とは
ピストンが下死点から上死点に移動すると、シリンダー内部の混合気はシリンダー容積から燃焼室の容積にまで圧縮されることになります。このシリンダー容積と燃焼室容積の比率を「圧縮比」と言います。燃焼室の大きさや形は、シリンダーブロックとシリンダーヘッドの形状で決まります。シリンダー容積が同等なら、燃焼室が小さいほうが圧縮比が高くなり、生まれる運動エネルギーはより大きくなります。
例えば、圧縮比10というエンジンがあったとしますと、ピストンが下死点から上死点に移動することで、空気(混合気)の体積が1/10に圧縮されるということを意味しています。一般的には圧縮比が高いほど燃焼効率が良くなりますので、出力が上がりやすく、効率も良くなりやすいと理解頂いて大丈夫です。一方で圧縮比が高くなりすぎると、ノッキング等の異常燃焼が起こりやすくなるので、ちょうど良いところに最適点があるということになります。
まとめ
今回はエンジンの基本的なスペックでよく使われる用語について説明しました。エンジン性能に関して非常に重要な要素になりますので、設計技術者もそうでない方も覚えておいて頂くと、エンジンの特性の理解につながること間違いなしです。
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