【簡単解説】エンジンの空燃比

エンジン

エンジン設計をしていると、「空燃比(くうねんひ,くうねんぴ)」という言葉をよく聞くと思います。空燃比はエンジンの出力や燃費、排ガス性能などに深く影響を与える重要なパラメータです。今回は、そんな空燃比について、わかりやすく解説します。

空燃比とは

エンジンの燃焼行程では、霧化した燃料と空気が混ぜ合わされて混合気となったものを燃焼させています。混合気における、空気と燃料の重量の比率を空燃比と呼びます。この比率は、エンジンに吸入される混合気中の空気の重量を燃料の重量で割った数値で表示されます。空燃比が14:1や14と表現するのですが、その場合は空気が燃料の14倍あるという事を意味しています。

エンジン内で燃料を燃やすときには、酸素が必要となります。酸素の量が変わると、それに応じて燃え広がる速さや燃焼温度も変わります。したがって、空気と燃料の比率をどれくらいに設定するかで、エンジンの性能や排ガス成分が大きく変わってしまうことになります。

理論空燃比と色々な種類の空燃比について

レギュラーガソリンが燃焼するのにもっとも効率のよい空燃比は 14.8 : 1 で、この比率を「理論空燃比」といいます。ただし、これは理論上の数理で、実際には 12~13 : 1 付近でもっとも出力が上がることがわかっています。この比率を「最大出力空燃比」と呼びます。

最大出力空燃比より燃料の比率が大きくなる(リッチ燃焼になる)と、酸素不足となるため不完全燃焼を起こしやすくなります。加えて、燃料の消費も大きいため、この比率で燃焼を行うメリットはまったくないです。それとは逆に、最大出力空燃比より燃料の比率が低い場合(リーンな燃焼の場合)は、出力が下がるものの、同時に燃料の消費も少なくなるというメリットがあります。そのため、現在の自動車ではコンピュータ制御でインジェクターの燃料噴射量を調整し、大きな出力を必要としないときには空気の比率を高めて燃費をよくしています。燃料消費率がもっとも低いのは空燃比 16~18 : 1 付近で、これを「経済空燃比」といいます。

ガソリンエンジンで安定して走行できる空燃比は 10~17 : 1 程度と言われていますが、実際にエンジンが求める空燃比は冷却水の温度や走行状態などによって変わります。また、最近では省燃費化の手段として、希薄燃焼(リーンバーン)や超希薄燃焼(ウルトラリーンバーン)のように、燃料の極めて薄い状態で燃焼を行うこともあります。

それぞれの空燃比は、次のイメージ図の通りです。

空燃比グラフ

まとめ

エンジン性能や燃焼にとって非常に大事な空燃比について、解説しました。燃料の種類によって理論空燃比は変わりますし、エンジン性能を決める上でも基本的なスペックになります。この解説を通じて、空燃比の基本を理解いただけたと思います。エンジン設計やエンジンのチューニングなどで、ぜひこの知識を活用してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました