【簡単解説】平均有効圧の定義と正味平均有効圧・図示平均有効圧の違いを紹介

エンジン

エンジンの平均有効圧という言葉を聞いたことはないでしょうか?エンジン設計をする上での非常に重要な指標になりますので、その基本概念について簡単解説します。

平均有効圧とは

平均有効圧(mean effective pressure)(Pme)とは、1サイクルの仕事を行程容積で割ったもので、エンジン出力の大きさや燃焼の強さをシリンダ容積に無関係にして表している指標になります。シリンダ容積を増やせば、出力が増加するので、出力だけではエンジンとしての性能や要求される強度を表すのに不十分なのです。そこで、シリンダ容積による影響を取り除いた指標である平均有効圧が便利になってきます。

Pmeの意味合いを簡単に言うと、Pmeが大きければ、エンジンサイズに対して相対的に出力(馬力)(トルク)が大きく出ているという事になります。そのため、Pmeが大きいと、エンジンとしては小型・高出力で優秀なのですが、一方でエンジンの設計強度としては十分に上げておく必要があります。

正味平均有効圧と計算方法

平均有効圧にも、実は色々な種類があります。なぜ色々な種類があるのかと言うと、出力をどの数字を使って計算するのか、という事で変わります。平均有効圧を使って何を指標としたいのか目的によって異なりますので、簡単に解説します。

まず、紹介したいのは、正味平均有効圧です。英語では、BMEP(Brake Mean Effective Pressure)と表記し、単にPmeと言えば、このBMEPを示すことが多いです。BMEPは、出力をカタログで記載されている出力など、エンジンスペック上の数値を用いて計算します。エンジンが実際に出している出力がシリンダ容積に対して大きいのか小さいのかを評価したい時に使います。BMEPの計算式は以下の通りです。

Pme (kPa) = 出力(kW) / シリンダ数 / (π / 4 X ボア径(m)^2 X ストローク(m) X 回転数(rpm) / 60)

計算式の意味としては、出力を1シリンダ当たり、1行程の容積に割り戻しています。(π / 4 X ボア^2 X ストロークは容積(m3)の計算です) (回転数 / 60は1秒間当たりの単位換算です。出力(kW)は1秒間当たりの仕事(kJ)です) (kJをm3で割ると圧力 (kPa)になります)

以前に燃費で紹介したMAN社の7G60ME-C10.5という2ストロークディーゼルエンジンを例にPmeを計算してみます。出力は19,880kW、シリンダ数は7、ボア径は0.6m、ストロークは2.79m、回転数は103rpmです。上の計算式に当てはめると以下のように計算できます。

Pme = 19880 / 7 / (π / 4 X 0.6^2 X 2.79 X 103 / 60) = 2097 kPa ≒ 2.10 MPa

このように計算して、Pme2.1MPaを算出できます。4ストの場合はX2(2倍)する必要がありますので、後ほど解説します。

図示平均有効圧

次に、図示平均有効圧について簡単解説します。図示平均有効圧はPmiで表記しまして、英語ではIMEP(Indicated Mean Effective Pressure)と記載されます。正味平均有効圧(Pme)は、動力計などで計測した軸端での出力を用いる事に対して、図示平均有効圧(Pmi)はシリンダー内の容積と圧力の変化を計測して算出した図示出力を用います。シリンダー内の出力の大きさや燃焼の強さを真に評価したい場合は図示平均有効圧(Pmi)を使います。設計する上で重要な指標は実はPmiの方になります。

図示出力はほとんど公表されないのですが、一般的に軸端出力の10%増し程度と言われています。シリンダーで仕事をした後、機械損失(摩擦損失)によって10%程度仕事が減ってしまってから、実際に軸端で動力として取り出されている出力は図示出力よりも小さいです。先ほどの例では、正味平均有効圧は2.1MPaでしたが、図示平均有効圧では約10%増しの、約2.3MPaになります。このように図示平均有効圧(Pmi)の方がより高い数字になり、燃焼仕事としてはスペックで見える数字よりも本当はもっと頑張っているということです。

2ストと4ストでの計算方法の違い

平均有効圧を計算する際に注意して頂きたいのが、2ストと4ストでの違いです。これまでの計算は2ストを例に示してきましたが、2ストは1回転毎に1回燃焼するのに対して、4ストは2回転で1回しか燃焼しません。よって、4ストの場合は、上記で計算した結果に対して、2倍して下さい。これは、平均有効圧は燃焼や仕事の強さを示す指標である為です。

まとめ

今回は、平均有効圧の定義や正味平均有効圧・図示平均有効圧の違いについて、紹介しました。少し難しいかもしれませんが、エンジンとしての小型・高出力という指標を示す非常に大事なものになります。次回、出力とトルクの関係について、簡単解説しようと思います。

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