【簡単解説】理想的なエンジン効率を実現できるカルノーサイクルについて

カルノーサイクル エンジン

エンジンや熱機関について勉強すると、必ず出てくるのが「カルノーサイクル」です。このサイクルは、理想的なサイクルであり、エンジンの効率を考える上でも重要な理論です。今回は、そんなカルノーサイクルの簡単解説とエンジンとの関連性について紹介します。

カルノーサイクルとは

カルノーサイクルとは、熱量の流入・流出を可逆的に理想的な状態で行えるものとした理想的なサイクルのことを言います。カルノーというフランスの物理学者が考案しましたので、カルノーサイクルと呼ばれています。実際には、カルノーサイクルを実現することはできないのですが、熱機関やエンジンのサイクルについて論じる際の基礎知識として重要であり、また、サイクルの理想的な限界を示す指標としても有効になります。

カルノーサイクル

上の図は、カルノーサイクルの4つのプロセスを示しています。左図は、縦軸に圧力、横軸に体積をとり、PV線図と言われるものです。右図は縦軸に温度、横軸にエントロピーをとり、TS線図と呼ばれるものです。

1⇒2のプロセスを断熱圧縮と言います。断熱圧縮では、外部からの仕事なしで理想気体が圧縮されます。

2⇒3のプロセスを等温膨張と言います。等温膨張では、温度を一定に保ちながら熱エネルギー(仕事)を取り出します。

3⇒4のプロセスを断熱膨張と言います。断熱膨張では、熱の流出なしで理想気体が膨張し、温度を下げます。

4⇒1のプロセスを等温圧縮と言います。等温圧縮では、仕事を加えられ同じだけの熱量を放出しながら、温度を一定に保ちつつ圧縮されます。

このようなプロセスを辿って、初めの状態に戻ってくる変化のことをサイクルといいます。詳細な説明や計算は割愛するのですが、PV線図やTS線図の面積が正味発生する仕事になります。面積が大きければ大きいほど、多くの仕事をする熱機関ということになります。熱効率としては、投入したエネルギーのうち、どれだけ仕事に変換できるかになりますので、可逆機関の場合は色々な項が相殺されていって、最終的には以下のように温度の項のみの比率で表されます。

熱効率η = 1- (低温源T1 / 高温源T2)

上記はカルノー効率と呼ばれています。

理想的なエンジン効率

カルノーサイクルは可逆機関の理想サイクルですので、実際のエンジン効率で実現することは不可能です。例えば、温度変化なしで熱エネルギーや仕事を取り出すという事が物理的に不可能である為です。しかしながら、今回は仮に理想サイクルを達成したとして、エンジン効率がどのくらいになるのか試算(思考実験)してみたいと思います。

エンジンの燃焼最高温度を2500℃(=2773K)とし、大気温度を25℃(=298K)として効率を試算します。(Kはケルビンという単位で絶対温度を示します。) 上記のカルノー効率に当てはめると、

熱効率η = (1- 298 / 2773) = 0.8925 ≒89%

となります。理想的にはエンジン効率を約89%まで高めることはできますが、現実的には様々な制約条件があって約40~50%に留まっているということになります。ここではイメージだけですので、燃焼温度を上げれば上げるほど、熱効率が良くなると理解していただければ十分かと思います。エンジンは間欠燃焼の為、ガスタービンなどに比べて燃焼最高温度を上げることができますので、効率が良い一つの理由になっています。

まとめ

カルノーサイクルは、エンジンの効率を考える上での基礎となる理想サイクルです。実際には実現不可能なサイクルですので、次回は実際のエンジンに近いサイクルを紹介します。

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