【簡単解説】断熱圧縮の計算、エンジン圧縮比を使った圧縮圧・圧縮温度の計算

断熱圧縮 エンジン

エンジンのサイクル論を理解するためにも知っておきたいのが「断熱圧縮」という現象です。今回はその内容を紹介し、エンジンの圧縮比との関わりについて解説します。

断熱圧縮とは

「断熱圧縮」とは、外部に熱が逃げないようにして圧縮することを言い、空気などの気体を注射器などの密閉容器に入れて急速に圧縮させることと同じ現象です。小学校の理科の実験でもあったと思いますが、密閉容器に入った気体を圧縮するとその容器の周りが熱くなりましたよね。その現象と同じです。

高校物理では、そこから発展して、断熱圧縮した時の圧力と体積と温度の関係を数式として計算する方法として、以下のボイルシャルルの法則を習いましたよね。

PV / T = 一定

P:圧力 V:体積 T:温度 で、気体の圧力が上がれば、体積が減るand/or温度が上がる、というように状態が変化して一定の関係性を示すというものでした。

話は逸れますが、それを基に、理想気体の状態方程式というものも習いましたよね。

PV=nRT

n:モル数 R:気体定数

大学の熱力学では、そこから更に発展して、断熱圧縮(ポリトロープ変化)した前後の圧力や温度を、比熱比κを使って計算式で求めることができるようになります。結論だけ言ってしまうと、以下の関係式になります。

P1 X V1^κ = P2 X V2^κ

T1 X V1^(κ-1) = T2 X V2^(κ-1)

圧縮比と圧縮圧・圧縮温度の関係

例えば、圧縮比9.0のエンジンについて、断熱圧縮した後の圧縮圧と圧縮温度がいくつになるのか計算すると以下の式になります。ここでは、比熱比κは空気の1.4とし、圧縮前圧力を大気圧の0.1013MPa、圧縮前温度を25℃(=298K)としました。(K(ケルビン)は絶対温度の単位です)

P2 = P1 X (V1 / V2 )^κ = 0.1013 X (9.0)^1.4 ≒ 2.2MPa

T2 = T1 X (V1 / V2 )^(κ-1) = 298 X (9.0)^0.4 ≒ 718K (=445℃)

※圧縮比9.0の場合は、圧縮前が9で圧縮後が1の体積比率になるという意味ですので、V1 / V2 = 9.0という事を意味しています。

上記のような計算で、エンジンの点火前(厳密には上死点)の圧縮圧と圧縮温度を算出することができます。今回の計算例では、2.2MPaと445℃でした。かなりの高温・高圧状態で点火させていることがわかりますね。

まとめ

断熱圧縮はエンジンのサイクルや性能を理解する上で重要な要素です。これらの基本概念を理解しておくことはエンジン設計者として非常に大事です。次回は、エンジンのサイクルについて紹介します。

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