【簡単解説】エンジンの性能や仕組みを理解するためのディーゼルサイクルとオットーサイクルとの違い

ディーゼルサイクル エンジン

前回、オットーサイクルを紹介しましたので、今回は、ディーゼルサイクルについて簡単解説します。ディーゼルサイクルは、大型のトラックやバスのエンジン、舶用エンジンとして広く使われているディーゼルエンジンに利用されているサイクルです。様々な種類の実用サイクルを理解することで、エンジンの仕組みや性能の理解が深まります。

ディーゼルサイクルとは

ディーゼルサイクルは、定圧サイクルもしくは等圧サイクルとも呼ばれます。圧力の変化が等しいプロセスとなっているサイクルです。また、この機関を最初に考案した人の名前がルドルフ・ディーゼルであったため、ディーゼルサイクルと呼ばれるようになりました。ルドルフ・ディーゼルが最初に企てたのは等温燃焼だったのですが、実際に運転したエンジンが偶然に等圧燃焼になったというエピソードもあります。

ディーゼルサイクルの原理は、主にディーゼルエンジンに利用されているサイクルです。なので、このサイクルを理解することで、エンジン設計者として広く実用的な知識が身に付きます。

ディーゼルサイクルの解説

ディーゼルサイクル

上の図は、ディーゼルサイクルの4つのプロセスを示しています。

1⇒2のプロセスは断熱圧縮です。ピストンが下から上へ動くことで、燃焼室内にある空気を高温高圧の状態に圧縮します。その際、空気の体積は減り、圧力が上がり、温度が上がることをPV線図とTS線図で示しています。

2⇒3のプロセスは等圧変化(等圧吸熱)です。圧縮された高温高圧の空気中に燃料を噴射し、燃料の自着火によって燃焼・爆発が起こります。この吸熱プロセスは燃焼が開始して終わるまでに時間を要します。ピストンが下降し始めるのに伴って燃焼が進行し、一時的にシリンダ内の圧力が一定に保たれて燃焼が終わるプロセスとなっています。PV線図ではピストンが下へ動くので体積が上昇し、圧力は一定となっています。TS線図では、温度もエントロピー(吸熱)も上昇しています。エンジンの燃焼室設計や強度設計に重要な指標であるTmaxとPmaxについては、3の地点がTmax(燃焼最高温度)となり、Pmax(爆発最高圧力)は2~3の間の地点になります。

3⇒4のプロセスは断熱膨張です。爆発によってピストンがさらに下へ動き、連接棒やクランクシャフトへ動力を伝達します。その際、燃焼室の体積は増え、圧力も温度も下がるということをPV線図とTS線図で示しています。

4⇒1のプロセスは等容放熱です。燃焼ガスが排気弁を通って排出され、新気(新しい空気)が吸気弁から流入します。シリンダー内の排気ガスが空気に入れ替わる動作が一瞬で行われたとして、PV線図は体積一定のままで、圧力のみが減少しています。TS線図では、温度もエントロピー(放熱)も減少しています。

このようなプロセスを辿って、エンジンの圧縮行程⇒燃焼⇒膨張行程⇒排気行程・吸気行程が行われていることをサイクルとして表しています。(ここでのサイクルは、ピストンが上下1往復しかしていないので、2ストの行程をイメージしてください。4ストのサイクルやさらに実際に近いサイクルのロスも考慮する方法は今後解説します。)

ディーゼルサイクルとオットーサイクルとの違い

前回、オットーサイクルを解説しましたが、これらの違いは、2⇒3のプロセスにあります。オットーサイクルでは、ガソリンと空気が混ざった混合気が点火プラグによって一瞬で燃焼して完了するので、等容変化となっています。燃焼方式が予混合燃焼ですので、燃焼が均一に、かつ、一瞬で完結します。

一方のディーゼルサイクルは、高温高圧の空気中にディーゼル油(軽油)を噴射して、燃料の自着火によって燃焼して完了するので、時間がかかります。そのため、等圧変化となっています。燃焼方式としては拡散燃焼ですので、燃焼開始から完了までの時間が予混合燃焼に比べて長くなりますが、その代わりに燃焼温度は上がります。

その他の膨張行程、排気行程・吸気行程、圧縮行程のサイクルとしてのプロセスは同じです。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの違いやメリット、デメリットは過去の記事を参照お願いします。

ディーゼルサイクルを基にしたエンジンの熱効率

ディーゼルサイクルをエンジンに適用した場合の熱効率は、理論的に以下の式で表されます。

熱効率η = 1 – { 1 / ε^(κ-1) } X { (σ^κ -1) / κ(σ-1) }

ε:圧縮比 κ:比熱比 σ:等圧度で、つまり、圧縮比と比熱比と等圧度によって決まり、圧縮比と比熱比が大きくなるほど熱効率が上昇し、等圧度が大きいほど熱効率が低下するということになります。

なお、等圧度は、サイクルの2と3の地点の体積比で、V3 / V2で表され、常に1以上の数値を取ります。

例えば、圧縮比が14.0、比熱比が空気の1.4、等圧度が1.5のディーゼルエンジンに当てはめてみると以下の計算になります。

熱効率η = 1- { 1 / 14.0^(1.4-1) } X { (1.5^1.4 -1) / 1.4(1.5-1)} = 0.6202 ≒ 62.0%

このエンジンの理論的な熱効率は62.0%ということになります。カルノーサイクルの理想効率よりは下がりましたね。しかしながら、ガソリンエンジンより圧縮比を高められますので、ガソリンエンジンよりは熱効率が高くなります。

まとめ

今回はディーゼルエンジンで使われているディーゼルサイクルについて解説しました。熱効率は圧縮比と比熱比と等圧度によって理論的には決まりますが、実際にはまだまだ奥が深いですので、今後さらに解説します。

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