【簡単解説】2ストロークエンジンの性能を理解するための様々な損失と実際のサイクル

実際のサイクル エンジン

これまでに、カルノーサイクル、オットーサイクル、ディーゼルサイクル、サバテサイクルを紹介してきました。しかしながら、シリンダ内でガスが実際にする仕事は、これらのサイクルから得られる仕事よりも小さくなります。その原因は、様々な損失があるからです。今回は、2ストロークエンジンを例に、エンジンで発生する損失と実際のサイクルについて、簡単にわかりやすく解説します。

時間損失

シリンダ内の燃焼は、時間遅れがあるため、サイクル通りに等容・等圧の変化が起こらないのです。その燃焼開始~完結までの時間遅れをサイクルで表現すると、下の図の赤線のような形になります。少し早めに燃焼を開始する必要があるため、上死点の圧縮圧付近が丸くなり、Pmax(燃焼最高圧)の発生位置が遅れ、かつ、Pmaxが低くなります。さらに、膨張行程中にも燃焼が長く続き熱が供給されることになります。

サイクルの損失

冷却損失

シリンダ壁を冷却しているため、膨張行程の間にシリンダ壁から冷却水へ熱損失が発生してしまいます。厳密には圧縮行程の後半や燃焼中も冷却損失が発生しますが、簡易的に膨張行程の損失を冷却損失として扱います。サイクルで表現すると、上の図の青線のような形になります。膨張行程中の圧力が一定量減少することになります。

吸排気損失

膨張行程の終わりに、燃焼ガスと新気の入れ替えをしますが、この動作も一瞬では完結できないため、損失が発生します。実際には下死点よりも前に排気弁を開いて燃焼ガス(排ガス)を排出し始める必要があります。また、吸気は、下死点よりも遅れて吸気弁が閉じて圧縮が遅れて開始することになります。これらの部分の仕事が損失になります。サイクルで表現すると、上の図の緑線のような形になります。下死点での吸排気行程の等容変化が丸くなり、圧縮始めの圧力が下がることになります。

実際のサイクル

以上の3つの損失を合計すると、実際のサイクルは下の図の黒実線のような丸くなった形になり、理論サイクルに対して一回り小さくなってしまっています。面積が小さくなるということは、熱効率も悪くなっているということを示しています。これらの損失の他にも、流体が流れることで生じる圧力損失やピストンリングからのガスの漏れによる圧力損失なども厳密には考慮する必要がありますが、概ね上記の損失を基に性能を評価することができます。

実際のサイクルは計測によって得ることができますので、エンジンの性能を評価する際には、理論サイクルに対して、どの程度の差がどの場所生じているのかを確認することで、どのような損失に対しての対策を施すことが有効なのかを知ることができます。

実際のサイクル

まとめ

今回は2ストロークエンジンを基に、3種類の損失と実際のサイクルについて、簡単に解説しました。4ストロークエンジンでは、サイクルの形や損失が一部異なるところがありますので、次回は4ストの損失と実際のサイクルについて解説するようにします。

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