【簡単解説】船舶やエンジンのバードレンジ

ねじり振動 エンジン

船舶やエンジンの軸系関連の用語の中で「バードレンジ(Barred Range)」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?エンジンや回転機械を壊さないように扱う上で、非常に大事な概念ですので、わかりやすく解説します。

バードレンジとは

「バードレンジ(Barred Range)」とは、バードスピードレンジ(Barred Speed Range)とも呼びますが、連続使用禁止の回転数範囲になります。もし、その回転数範囲で長時間運転してしまいますと、クランク軸やプロペラシャフトなどのシャフトが壊れてしまいます。そのため、設計時にその回転数範囲は使わないように検討します。止むを得ず通過しないといけない場合は、回転数をできる限り速く上昇させて、その回転数範囲で運転する時間をできる限り早く短くします。このように、その回転数範囲を素早く抜け出すことを「クイックパス」と言います。

大学の時の先生が言っていた話ですが、「第一次世界大戦後に日本が戦利品としてドイツから当時最新鋭の潜水艦を得たのですが、潜水艦を日本に曳航して帰る時、回転計に赤色で印が付いていたので、その印の回転数で運転すれば良いと思って運転していたら、シャフトを何本も折ってしまった。」という逸話があるそうです。その回転計の印は、「バードレンジがあるので、クイックパスしなさい」というマークだったのですね。

バードレンジの詳細

例えば、定格回転数が100rpmのエンジンの場合のバードレンジを紹介します。横軸に回転数、縦軸にねじり応力のグラフが以下の図の通りのエンジンがあったとします。黄色線がクランク軸などにかかるねじり応力の推定線(計算による推定値)を示しています。青線,赤線はそれぞれねじり応力の許容値でτ1ライン、τ2ラインです。(詳細はNK船級のD編8章を確認頂きたいのですが、τ1は連続運転禁止の許容線(バードレンジを設ければ運転可能)、τ2は運転禁止の許容線(τ2を超える運転は絶対に禁止)です。定格回転数より上のτ3も運転禁止の許容線です。)

黄色線の共振回転数がτ1ラインを超えているので、黒破線の範囲をバードレンジとして規定しています。この範囲の回転数はクイックパスして、素早く通り抜けないと、過大なねじり応力が発生して、クランク軸などのシャフトが壊れることになります。

まとめ

今回は、船舶やエンジンの軸系を検討する際に必ず出てくるバードレンジについて紹介しました。次回は、そもそもなぜ壊れるのかというところで、ねじり振動やねじり応力について解説します。

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