209_エンジンの空燃比についてわかりやすく解説

空燃比とは エンジン

エンジンの技術的な話をしたり、エンジンを設計したりしていると、「空燃比(くうねんひ,くうねんぴ)」という言葉がよく出てくると思います。空燃比はエンジンの出力や燃費、排ガス性能などに深く影響を与える重要なパラメータです。今回は、そんな空燃比について、わかりやすく解説します。

空燃比とは

空燃比(A/F、Air-Fuel Ratio)とは、「空気と燃料の割合」を意味します。エンジンの燃焼行程では、霧化した燃料と空気が混ぜ合わされて混合気となったものを燃焼させています。混合気における、空気と燃料の重量の比率を空燃比と呼びます。この比率は、エンジンに吸入される混合気中の空気の重量を燃料の重量で割った数値で表示されます。空燃比が14と言ったり、14:1と表現したりするのですが、その場合は空気が燃料の14倍あるという事を意味しています。

エンジン内で燃料を燃やすときには、酸素が必要となります。酸素の量が変わると、それに応じて燃え広がる速さや燃焼温度も変わります。したがって、空気と燃料の比率をどれくらいに設定するかで、エンジンの性能や排ガス成分が大きく変わります。

理論空燃比

理論空燃比とは、混合気中の酸素と燃料が過不足なく反応する時の空燃比を理論空燃比と言います。従いまして、燃料の種類によって、理論空燃比の数値は変わります。

例えばレギュラーガソリンの場合、燃焼するのにもっとも効率のよい理論空燃比は 約14.7 : 1となります。これはガソリンを1g燃焼させるのに、空気14.7gが必要であるということを意味しています。

色々な種類の空燃比について

理論空燃比は理論上の数字ですが、実際には 12~13 : 1 付近で燃焼させると、もっとも出力が上がることがわかっています。この比率を「最大出力空燃比」と呼びます。最大出力空燃比より燃料の比率が大きく空燃比が低くなる(リッチ燃焼になる)と、酸素不足となるため不完全燃焼を起こしやすくなります。加えて、燃料の消費も大きいため、この比率で燃焼を行うメリットはまったくないです。

それとは逆に、最大出力空燃比より燃料の比率が低く空燃比が高い場合(リーンな燃焼の場合)は、出力が下がるものの、同時に燃料の消費も少なくなるというメリットがあります。そのため、現在の自動車ではコンピュータ制御でインジェクターの燃料噴射量を調整し、大きな出力を必要としないときには空気の比率を高めて燃費を良くしています。燃料消費率がもっとも低いのは空燃比 16~18 : 1 付近で、これを「経済空燃比」といいます。

ガソリンエンジンで安定して走行できる空燃比は 10~17 : 1 程度と言われていますが、実際にエンジンが求める空燃比は冷却水の温度や走行状態などによって変わります。また、最近では省燃費化の手段として、希薄燃焼(リーンバーン)や超希薄燃焼(ウルトラリーンバーン)のように、燃料の極めて薄い状態で燃焼を行うこともあります。

空燃比には、「理論空燃比」「最大出力空燃比」「経済空燃比」と様々な種類がありましたが、それぞれをイメージ図で示すと以下の通りになります。理論空燃比よりも低いと(リッチ燃焼だと)、出力(トルク)が大きくなり、空燃比が大きくなると(リーンバーンになると)、燃費が良くなります。

空燃比グラフ

まとめ

エンジン性能や燃焼にとって非常に大事な空燃比について、解説しました。燃料の種類によって理論空燃比は変わりますし、エンジン性能を決める上でも基本的なスペックになります。この解説を通じて、空燃比の基本を理解いただけたと思います。エンジン設計やエンジンのチューニングなどで、ぜひこの知識を活用してください。

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