220【簡単解説】エンジンの振動の分類とねじり振動

ねじり振動 エンジン

前回の記事でバードレンジについて紹介しましたが、今回はエンジンのねじり振動や振動全般についてわかりやすく解説します。エンジンは車やバイクや船などを動かすための重要な心臓部に当たりますが、動力を生み出すのと同時に加振源となって振動を発生させてしまっています。乗り心地だけでなく、設計する上でも部品の信頼性に影響を与えますので、きちんと理解しておくことが大切です。

振動の分類

エンジンの振動は実用上、次の5つに分類できます。

  • 軸のねじり振動
  • 軸の縦振動
  • 外部アンバランスモーメント
  • ガイドフォースモーメント
  • ローカル振動

設計時に適切な対策を施しておけば、影響を最小限に抑えることができますので、それらの加振要因や対策を説明します。

ねじり振動

クランク軸がピストンに押されて回転する時に発生する、軸がねじれようとする振動です。ピストンから作用する力が必ずある不等間隔で生じますので、必ずある周波数でのねじり振動が発生してしまいます。船であれば、プロペラシャフトなど、クランク軸が接続されているすべての軸系に影響を与えますので、それらすべての軸系を考慮して、事前に設計しておく必要があります。マスバネ系と呼ばれる、回転質量と軸のねじりばね剛性のシステムで模擬してねじり振動を計算することで、設計時点で適切に回避することができます。

冒頭のグラフがねじり振動のイメージ図になります。ねじり振動の共振点を運転回転数の範囲外に設定するか、運転回転数範囲内であってもクイックパスすることで対処可能です。

縦振動

クランク軸がピストンに押された際に、クランク軸のアームがたわんで軸方向に開いたり閉じたりして発生する軸方向の振動です。これはエンジン内で完結しやすい振動です。ある許容値内に収まっていれば問題ないですが、ある一定値以上であればダンパーなどを設置して振動を押さえる必要があります。

外部アンバランスモーメント

外部アンバランスモーメントとは、エンジンの回転や往復運動によって、質量が不均衡(アンバランス)になって生み出される外部モーメントのことです。この時、外部へ働く力はゼロですが、エンジンがねじれたり、回転したりするような形でモーメントが発生します。シリンダ数にもよりますが、1次モーメント(1回転につき1サイクル)と2次モーメント(1回転につき2サイクル)を考慮する必要があり、節の形についても、垂直形や水平形など様々な種類があります。

船体側や車体側の方へ振動による悪影響を与えてしまいますので、設計者としては事前に対処しておくべき振動になります。

ガイドフォースモーメント

ガイドフォースモーメントとは、連接棒(コンロッド)によって上下運動から回転運動に変換される際に、クロスヘッドやピストンの位置で作用する横方向の反力によって発生する振動です。このモーメントは、エンジン本体の上部を横方向に移動させる振動を起こし、H形、X形のような節の形でエンジン本体の上部を振動させます。

船体であれば、摩擦ステー(トップブレーシング)と呼ばれる板で、固定することで振動を押さえています。

ローカル振動

この振動は、ねじり振動や外部アンバランスモーメントが起因となって生じるエンジンの配管やケーブルなどの局所的な振動です。エンジン内で完結すべき振動で、適切なサポートを設けることで過大な振動を押さえる必要があります。

まとめ

エンジンの振動は日常的に発生する現状であり、ゼロにすることができないので非常に難しい問題になります。適切な対策を講じることで悪影響を最小限に抑えることしかできないのですが、そうすることで、乗り心地や部品の信頼性向上にもつながります。設計者としては、腕の見せ所になりますので、分類や発生要因を基に適切に対処することで、エンジンの信頼性向上につながると幸いです。



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